検査の前夜に考えたこと

検査の前夜に考えたこと



検査の前夜に考えたこと

2026年4月10日、新大阪のビジネスホテルで、これを書いている。

明日の朝、大腸内視鏡検査がある。今夜は下剤を飲み、食事も取れない。窓の外には梅田方面のビル群が光っている。部屋には自分と、ペットボトルの水と、薄い静けさだけがある。

こういう夜は、妙に考えがまとまる。


母が42歳で死んだ

母は42歳で大腸がんで亡くなった。

私が今40歳だから、あと3年で母が逝ったときの年齢に追いつく。そう考えると、検査を受けないという選択肢は、私にはなかった。

もちろん、「だから必ず自分もがんになる」とは思っていない。遺伝的リスクがあることは知っているし、実際に家族の半数近くが糖尿病を抱えていることも知っている。ただ、それよりも大きな理由がある。

知ることへの恐怖より、知らないままでいることの方が、もっと怖い。

母の病気が見つかったきっかけは、弟だった。当時4歳くらいだった弟が高熱で入院し、母が付き添いで病院に寝泊まりしていた。そのうち母自身も熱を出し、検査を受けたところ、徐々に異常が見つかった。大腸がん。すでに全身に転移していた。熱が出てから、わずか1ヶ月足らずの話だ。

弟の高熱がなければ、母は検査を受けていなかったかもしれない。虫の知らせだったのかもしれないし、偶然だったのかもしれない。いずれにしても、「たまたま検査を受けた」ことで見つかった——逆に言えば、検査を受けなければ見つからないまま進行していた。

だからこそ、自分に対しては「知る機会を逃さない」と決めていた。今日、ようやくその機会を作った。40歳にして初めての大腸内視鏡検査。遅すぎたかもしれないが、やらないよりはいい。


経営者が倒れると、全部止まる

一人で会社を動かしているということの怖さを、この2年で何度か実感してきた。

体調を崩した週、商談がすべて止まった。高熱で横になっていた数日間、メールの返信も、提案書の作成も、クライアントへの連絡も、何もできなかった。スタッフがいるわけでも、営業部隊がいるわけでもない。私が動けなければ、会社は止まる。それだけのことだ。

「小さな会社の代表はみんなそうだ」と言われれば、そうかもしれない。でも、それを「仕方ない」で終わらせたくなかった。

だから私は、AIに仕事を預けることを始めた。

今は複数のAIエージェントに役割を与え、日々の情報整理や営業フォロー、コンテンツ管理、財務の可視化といった業務を分担させている。私が倒れても、少なくともルーティンは動き続ける。完璧ではないが、「私が止まれば全部止まる」という状態からは、少しずつ脱しつつある。

AI参謀団を作った理由の一つは、確かにそこにある。

効率化とか生産性向上という話ではなく、事業継続のリスクヘッジとして、だ。


経営者の健康は、経営の問題だ

健康管理は自己責任だ、という言い方をよく聞く。それはその通りだと思う。

でも最近、「経営者の健康は、経営の問題だ」という言い方の方が正確だと思うようになった。

自分の体が唯一の生産設備である以上、その設備の点検・保全を怠ることは、経営判断としての失策だ。製造業の社長が工場の設備点検を「面倒だから」で後回しにしたら、誰でもおかしいと思う。なのに、自分の体については「まだ大丈夫だろう」で先延ばしにしてしまう。

私もずっとそうだった。

40歳で初めての大腸内視鏡、というのは、正直言って遅い。健診を受け続けてきたわけでもない。「そのうちやろう」を繰り返してきただけだ。

ただ、今年の春から少し変わった。京都の事務所に移り、MBAに入学し、環境が大きく変わる中で、自分の体の状態を正確に把握しておきたいと思うようになった。何かを始めるときに、自分の土台を確認したくなる感覚、というのが一番近い。


下剤を飲みながら考えること

ホテルの洗面台で、コップの水で下剤を流し込む。お世辞にも快適な夜ではない。

でも、こういう時間に限って、普段考えないことを考える。

事業が続くためには何が必要か。私がいなくても回る仕組みをどこまで作れるか。10年後、誰かに会社を譲れる状態にするためには、今何をすべきか。

答えはまだ出ていない。でも、問いを持ち続けることが、経営者の仕事の一つだと思っている。

検査の結果は、まだわからない。怖くないといえば嘘になる。でも、知ることを選んだという事実は、結果がどうであれ変わらない。


読んでいるあなたへ

健康診断を「そのうち」にしている経営者は、私だけではないと思う。

特に30代後半から40代にかけて、「まだ若い」と「もう若くない」の境界に立つ時期がある。その時期に、自分の体と正直に向き合うことは、経営判断のひとつとして有効だと思う。

精密検査でも、血液検査でも、何かひとつ、先延ばしにしているものがあれば、今年中に予約を入れることを考えてみてほしい。

誰かに言われるよりも、自分が「そのとき」に気づく方が、動きやすいことは知っている。ただ、こういう記事が、そのきっかけの一つになれば、書いた意味がある。


山本高資|合同会社 才有る者の楽園 代表
京都府在住。中小企業向け経営支援・AI研修を手がける。2026年4月より京都大学経営管理大学院に在籍。独自の「才有る式経営フレームワーク」を構築し、技術やこだわりで勝負する中小企業の伴走支援を行う。

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